■流血女神伝 喪の女王 3

4086007185流血女神伝 喪の女王 3
須賀 しのぶ 船戸 明里
集英社 2006-02-01

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森で逃亡生活を続けるカリエ達とフィンル親子・・・・
彼らを追って現れた都の使いを、ほんの赤子に過ぎないセーディラが不思議な力で撃退してしまう。
言いようのない不安に襲われるカリエは、何があろうと子を守る決意で修道院に身を寄せる。

一方都では、女王バンディーカが病に倒れていた。
偉大なる女王が揺蕩う夢の中で見る、自らの過去とは・・・?


ば、バンディーカ様ぁ〜!!
(↑黄色い声)

*以下の感想は、既刊含めネタバレ満載です。



待ちに待った流血女神伝最新刊は、正にバンディーカ女王主役の巻と言っても良いほどに彼女の過去が主軸になっています。
バンディーカ主役の外伝・・・読みた・・かった・・・。
冷徹な為政者のイメージが、ひたすらに純粋で、ある意味不器用な少女のイメージと徐々に重なっていくのはお見事。
そんな彼女が他の全てを切り捨て育ててきたのが、現在のユリ・スカナかと思うと感動もひとしおでした。

『セーディラ』には一瞬混乱したものの、「そういう意味か!!」とわかった時にはものすごーくやられたと思いました。
なるほどねぇ・・・絶対これは読んだ人みんなアハ体験してるよ!脳に良いよ!!(笑)
やはり二重・三重の意味を持つタイトルなのですねぇ・・・・。

そしてイーダルの出生は・・・うーんやはり重そうですね。
ああもう、次巻が夏って待ちきれんーーっっ!!(悶え中)

そしてすっかり『おかーさん』が身に付いたカリエといえば・・・

今回は尼さん!?

猟師の娘→王子の替玉→奴隷→小姓→海賊→皇妃→肝っ玉かーさん

とおよそ少女小説のヒロインとは思えぬ波瀾万丈の人生をたどってきたカリエ。ここでもへこたれません。
鎌を片手に啖呵を切るシーンは圧巻です(笑)

いや、笑うところではないのですよね。
ここまで『神』にリアリティを持たせ、人々の想いの反射によってその意味を映し出してみせる作品には久々に出会いました。
抽象的な存在そのものよりも、そこに関わる人々・それぞれの文化の違いを見せることでより心をすり寄せて読めた気がします。

実は今回一番「キタ」のは、マネイエのくだりでしたから。

「ねえ、お願い。私の前から消えて。あなたは悪くないの。わかってる。でもお願いだから消えて―――」

なんの悪意がなくてもそこにいるだけでどうしようもなく痛みを与えることもある。
「正しさ」だけではどうにも解消されない、悲しく不条理な痛み。

もちろんそれは、マネイエの弱さ故の不条理さなのですが・・・・どちらかといえば自分が近しい・抱きうる思いはマネイエの側なわけで。
その不条理さを静かに受け止めるカリエの強さに、感動と憧れを覚えました。
迷ってはいても、きっとカリエなら大丈夫!
サルベーンもかなり不穏な動きをしていますが、乗り越えられるはず・・・そう思いたいですね。

つか、カリエには・・・エドがいるしね!!
ちょっと今回は、カリエと一緒にわたしも赤面でしたよー!!

いやもう、癒しだったなぁエド・・・vv
どんな結末になるにせよ、それぞれが納得して幸せを手に入れて欲しいものだなぁと思います。

それにしても、このアップダウンが激しくひたすら続きが気になる怒濤の物語。
ちょっとコバルトから出すには勿体無いなぁとすら思えます。
いや、むしろこんなジャンルまで許容してしまう懐の深さはすごいよコバルトとは思うのですが。
少女小説というか・・・ロマンスの「ロ」の字くらいしかないだものこの話(笑)

デルフィニアや西の善き魔女のように、いずれ文庫化されたりしないかな?・・・面白いですよ。
あーでも、船戸さんの挿絵あってこその女神伝という気もするし・・・今のままでいいのかな(^^;)
ただ、コバルトってことで男性陣が引いてしまうと勿体無いですね。
男の人が読んでも、大人が読んでも(つか、これ中高生というよりはもっと上の世代が読んだ方が面白いですきっと)楽しめると思います。

早く続きが読めますように・・・
次の刊行はブラック・ベルベットの続きとのこと。
こちらも楽しみですv


2006.02.06 記

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