■MOMENT

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本多 孝好
集英社 2005-09

by G-Tools

死にゆくあなたのために、僕ができること。
病院でバイトをする「僕」は末期患者の願いを叶えることを始める。
初恋の人に会いたい」「いっそ殺してくれ」そこに込められた深い悲しみに、心は揺さぶられていく。深くて切ない青春小説。(内容紹介より)



大学3年生の「僕」は、なかなか就職活動を始めずに幼なじみに紹介された病院の掃除夫のバイトをしている。
あるきっかけから「僕」は、その病院に流れる「必殺仕事人」の噂・・・死を目の前にした人の前にだけ現れ、その願いを叶えてくれるという・・・の通り、末期患者の願いを叶えることになる。

紹介文をみると、ものっすごいうるうる〜な感動ものなのかなぁと思ったのですが良い意味で裏切られました。

詩的な言い方(笑)をさせてもらえば、
水面に映った冷たい月のような。
見えないほどに透き通った硝子の中に置かれた綺麗な石のような。

何も考えずに手を伸ばすと、冷たい水に触ってしまったり、硝子に傷をつくってしまったり。
定番に感動的なオチを求めていくとさらりとかわされて、心が痛くなる・・・そしてそれがしみじみと心に響く。そんな不思議な作品。

私は3作目の『FIREFLY』が一番好きでした。
病院の電話から、留守電にメッセージを残し続ける女性の心情を思うと切ない。共感。

淡々としたシンプルな筆運びで、4編の短編から成っているので読みやすいです。
「必殺仕事人」の噂の謎。幼馴染みとの関係。「僕」のこれから。
そういった大きな流れが一冊を通してあるのは北村薫を思い出す。
しかしどちらかと言えば、温かさというよりは澄んだ冷たさを孕んだ雰囲気。
藤原伊織「ダックスフントのワープ」の方が近いものを感じます。文章の美しさも含め。 あとは、クールな面が強く出た石田衣良とか。

本多さんの著作では、
オンライン書店ビーケーワン:MISSING『MISSING』
が一番好きなので、「知らない!」という友人にはこれを薦めてしまいます。
ミステリ色もあるのですが、恋愛感情が絡むものが基本なので、綺麗で切なさの残るラストがたまらなく良い。

2005.11.30 記

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